頸椎症とは?頚椎症性脊髄症・頚椎症性脊髄症の原因と症状

腕のしびれや痛みを感じる病気は非常に多いです。例えば脳梗塞でも麻痺はなくてもしびれだけを来すことはあります。
腕に血液を送る血管が狭くなるような病気では、手を暫く動かしているとしびれや痛みを感じてくることがあります。
ここでは腕のしびれや痛みを感じる病気のひとつである頸椎症について解説していきます。
頸椎症とは

最初に頸椎を含む脊椎の構造について確認しておきましょう。
人間を含む哺乳類の首は7個の頸椎で支えられています。人間は二足歩行をしていますから、頸椎は頭を支えなくてはなりません。
さらに、ただ支えるだけではなく首を動かした際に頭の重さがダイレクトに下の脊椎に伝わらないよう、クッション性を持たせる必要があります。
そのため頸椎はやや前方に凸のカーブを描くように骨が並んでいます。
脊椎の構造
頸椎に限らず、胸椎、腰椎、仙椎を含め、脊椎には上下にかかる力をしっかり支えるための椎体という構造があります。椎体と椎体同士が固定されることで脊椎はしっかりとした構造を保ちます。
ただ、椎体と椎体ががっちり固定されてしまうと首や腰を曲げたりひねったりできませんので、椎体と椎体の間には椎間板というやや柔らかいクッション性の構造物が存在します。
そして、それぞれの椎体には、後方に南京錠の錠前のようにUの字の形をした椎弓という構造がくっついています。椎弓と椎体が作る空間の中には脊髄が通っています。
この空間は、前後左右が靱帯で補強されており、その中に脊髄を収める膜が入り、膜のなかに髄液という液体が貯留し、その中に脊髄が収められているという構造になっているのです。この空間のことを脊柱管といいます。
頸椎の部分では8対の神経が脊髄から出てきて、首や腕に伸びています。脊柱管から脊椎の外に神経が出て行く隙間のことを椎間孔と言います。
脊髄や神経が圧迫されて症状が出る頸椎症
頸椎症は、これらの構造のうち、頸椎の骨や椎間板がずれたり変形したりすることによって脊髄や神経を圧迫し、症状がでるものを言います。
脊髄を圧迫することで症状がでるものを頸椎症性脊髄症、椎間孔の間を通る神経を圧迫するものを頸椎症性神経根症と言います。
頸椎症性脊髄症と頸椎症性神経根症のそれぞれの原因と症状について見てみましょう。
頸椎症性脊髄症の原因
頸椎症性脊髄症は、脊髄が通る空間が狭くなることで起こります。よくある原因としては、長年にわたり首に負担をかけて生活をすることで、徐々に頸椎の骨が変形し、脊髄を圧迫してくるものです。
また、脊柱管の中にある脊椎同士を固定する靱帯が徐々に石灰化することで肥大化し、脊髄を圧迫してくることもあります。
椎間板が変性し、脊柱管の方へ飛び出してくることで脊髄を圧迫することもあります。
いずれの変性も、ほとんどの場合は徐々に起こってくるため、だんだんと症状を感じてくることがほとんどです。
頸椎症性脊髄症の症状

頸椎症性脊髄症では多くの場合、手足のしびれを感じることで発症します。しびれの症状には、手足がビリビリジンジンするような症状や、触った感じが何かおかしいといった感覚障害の症状が含まれます。
脊髄の圧迫のされ方で症状は変わりますが、両側に感じる場合も多くあります。首の後ろに痛みを感じることも多いです。
しびれが継続すると、徐々に手足を動かしにくくなります。筋力が低下することもありますし、細かい作業がなかなかできないということで気づく方もいます。膀胱直腸障害といって、尿や便がなかなか出なかったり、逆に意図せず出てしまったりすることもあります。
初期の症状と進行した症状
これらの症状は、初期のうちには首の角度によって症状が出たり出なかったりすることもありますが、脊髄の圧迫が進行すると首の角度に関わらず、常に症状を感じるようになります。
初期のうちに適切に処置を行えば神経の障害は軽度ですみ、ほとんど症状が無い状態に戻る場合も多いです。
しかし、常に症状を感じるほど進行した場合は治療を行っても神経自体が痛んでしまっているので症状はなかなか元に戻らなくなってしまうのです。
また、もともと脊柱管が狭くなっているところに、頭部や頸部に強い衝撃が加わることで脊髄にぐっと力がかかることで症状を呈する場合があります。
この場合、圧迫がすぐに解除されれば、正座の後の足のしびれが徐々に改善するように症状が徐々に改善することもありますが、衝撃をきっかけに症状が永続的に続くこともありますから注意が必要です。
頸椎症性神経根症の原因

頸椎症性神経根症は、椎間孔を通っている神経が圧迫されることで起こる症状です。頸椎症性神経根症で最も多い原因は、椎間板が変性し、椎間孔の方に飛び出してくることで椎間孔が狭くなり、神経が圧迫されるというものです。
他には椎体の変性で骨棘と呼ばれるとげのようなものが形成され、やはり神経が圧迫されることによって症状が出現します。徐々に症状が出てくることもありますが、頸部や頭部に強い衝撃を受けることでそれまで狭くなっていた椎間孔がぐっと狭くなり、症状が突然出現することも時折あります。
頸椎症性神経根症の症状
脊髄からは神経は左右に分かれて椎間孔を通過します。椎間孔の狭窄は通常片側に起こりますから、症状が出るのも片側となります。
また、頸髄から出る神経は8対ですが、それぞれがそれぞれ固有の椎間孔を通過しますから、その神経支配に一致した限定された領域に症状が出るのが特徴です。
具体的には腕の親指側だけ、逆に小指側だけなどの狭い部分にしびれの症状が出現したり、一部の指だけ動かしにくいといった運動麻痺の症状が出現したりします。
頸椎症性神経根症も、頸椎症性脊髄症と同じようにもともと神経の通り道が狭いところに何らかの衝撃が加わることで発症する例が多く見られます。
頸椎症になりやすい人

頸椎症性脊髄症も頸椎症性神経根症も、もともと神経の通り道が狭くなっているところに強い衝撃を受けるか、もしくは徐々に神経の通り道が狭くなってくることで症状を呈します。
脊椎の変性は特に加齢によって進みます。大体40歳から50歳頃を超えてくると、症状を訴える方が多くなってきます。
この頃には椎間板の弾性が弱くなってきたり、頸椎自体にかかる力が慢性化して頸椎自体の変性が進んできたり、脊柱管内の靱帯の石灰化が進んできたりします。
特に首を曲げた状態で生活、仕事をしている場合には頭を支えようとして脊椎が変形しやすいため、頸椎症の発症も多くなります。
長時間のパソコン業務を含め座位での仕事が多い場合や、ソファーなどで姿勢を崩したまま長時間いる場合などのように、頭が体の真上にない姿勢を続けることは首につよい負担をかけます。首に負担がかからない姿勢を普段から心がけましょう。