胃カメラとバリウム、どっちを選ぶ?胃の検査の種類を解説

胃の検査には胃バリウム検査や胃カメラをはじめとするさまざまな方法があります。
胃カメラとバリウム、どちらを選べばよいのか迷った経験がある方もいらっしゃることでしょう。
ここでは胃の検査について詳しく解説していきます。
胃バリウム検査の特徴

胃の検診といえば「バリウム検査」を思い浮かべる人もいらっしゃるかと思います。
実際、企業における定期的な検診や自治体レベルでの健康診断などでも胃がんをはじめとする胃の病変の有無を検査するために、バリウムを使用した上部消化管X線造影検査が現在でも広く実施されています。
この胃バリウム検査では、バリウムという造影剤、胃を膨張させる作用を有する発泡剤を服用した状態で、X線を照射して主に胃の内部を観察します。
的確な検査結果を得るために、バリウム検査を受診する前日の食事内容に注意が必要です。油っぽい食事や甘い菓子などは消化するのに時間を要するためできる限り避けるようにして、夜の21時までには晩御飯を済ませるようにしましょう。
バリウム検査を受けた後は消化管内に長期に渡りバリウムが残存していると、便が硬くなるのみならず腸閉塞や消化管穿孔などを始めとする合併症を招く危険性があります。水分をいつもより多めに飲み、下剤を服用してバリウム造影剤を迅速に排出するようにします。
胃バリウム検査の利点
胃バリウム検査はバリウム造影剤と発泡剤を服用した後すぐに撮影検査を実施するため、検査にかかる時間は概ね10分程度と短めで済みますし、スキルス性胃がんを含む胃の悪性腫瘍や食道がんの発見に有用です。
造影剤が流れるにしたがってリアルタイムで食道や胃の蠕動運動、食べ物が通る様子や粘膜表面の造影剤の溜まりなどをモノクロで観察することができます。食道や胃の全体像を把握しやすく、がん病変以外にも胃潰瘍や胃炎、ポリープなども発見しやすいという利点が挙げられます。
胃カメラの特徴

胃カメラは上部消化管内視鏡検査とも呼称されており、先端部に小型カメラやレンズを内蔵した細長い管を口から挿入して、食道、胃、十二指腸などの上部消化管の内部を観察し、時に並行して治療を実施できる医療検査です。
昨今では医療機器や検査技術の発達により胃カメラの応用範囲も広がってきており、診断から治療までの一連の流れをスムーズに実践できるようになってきました。
口または鼻から先端に小さな医療用カメラである内視鏡が付いた管を体内に挿入し、食道や胃、十二指腸の内腔を観察して消化管内の隆起病変や陥凹所見など消化管粘膜の変化を捉えることができます。
胃カメラは胃の痛み、胃もたれ、胃部不快感、食欲不振、胸やけなどの原因となり得る胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんや逆流性食道炎などの病変を診断するのに非常に有用な検査であり、検査と同時に治療にも広く応用されています。
胃カメラの利点
一般的に広く知られている胃カメラの利点としては、胃の粘膜を直接観察できるので消化管内部の小さな病変の発見にも役立つこと、良性悪性の鑑別や確定診断に繋げること、放射線による被曝の影響がないこと、検査後に下剤を服用する必要がないこと、などが挙げられます。
X線検査に比べ、胃カメラ検査にはリアルタイムで病変を観察できるメリットがあるので、ポリープやがんを疑う所見が認められた場合は必要に応じて病変部の組織を一部採取して生検すると同時に、病変部の切除処置を実施することも可能です。
経口胃内視鏡と経鼻内視鏡の違い
胃カメラによる内視鏡検査時に使用されるスコープには長さや太さの違いによってさまざまな種類があり、大きく分類すると経口胃内視鏡と経鼻内視鏡検査の2つがあります。
経口胃内視鏡では口からスコープを挿入し、鎮静剤を使用しながら患者さんの苦痛が軽減できるように内視鏡検査を行うことも可能です。
一方、経鼻内視鏡検査は一般的に口から挿入する上部消化管内視鏡検査を鼻から挿入して実施する検査手法です。
特に、細径サイズの経鼻内視鏡は近年急激に普及しており、細径経鼻内視鏡の直径が約5mmであり、通常の経口内視鏡径がおよそ9mmということを考えれば約半分の太さとなります。検査を受ける患者さんにとって低侵襲で優しい検査方法といえます。
経鼻内視鏡は、経口内視鏡と比較してスコープ部分が舌根部に接触しない仕組みになっているために、患者さんの嘔吐反射が少なくて済みますし、検査中に担当医師と会話ができるなどの利点が挙げられます。
経鼻内視鏡と経口内視鏡はそれぞれに利点と欠点を持ち合わせていますので、担当医とよく相談してどちらの検査を受けるかを判断しましょう。
ABC検診の特徴

ABC検診は血液検査でできる胃がんリスク検診です。ピロリ菌IgG抗体測定によるピロリ菌感染の有無と胃粘膜の萎縮の程度に関してペプシノゲン値を測って調べることで、胃がんのリスクが高いケースをピックアップします。
具体的には、胃がんの罹患しやすさをA~Dの4段階に分類し、A<B<C<Dの順に胃の悪性腫瘍病変を発症するリスクが高くなることを示すというものです。
胃や十二指腸における潰瘍の原因と考えられているヘリコバクター・ピロリ菌の抗体価検査および消化管の粘膜萎縮を表現するマーカーのペプシノゲン検査を組み合わせて評価するABC分類を用いて、胃の状態に応じた検診間隔を効率的に設定することができます。
ただし、ピロリ菌の抗体価検査やペプシノゲン検査は胃粘膜の状態を簡便に評価する指標であり、胃がんを発見する胃がん検診に代わる診断方法ではないことを知っておきましょう。
ABC検診の利点
胃がんリスク検診とも呼ばれるABC検診は、胃粘膜の萎縮度とピロリ菌感染の有無を簡便に調査して、将来的ながん発症リスクを推測できる画期的な検診です。
胃カメラやバリウム検査をしなくても胃の病変を発見しやすい新しいタイプの胃がん検診であり、特段の食事や運動の制限をすることなくほんの数mlの採血をするだけで早期的に胃がんを疑うことが可能となります。
胃カメラ検査やバリウム検査を行う時間がない方、もしくは検査が怖くてどうしてもやりたくない方にとっては、まずABC検診を受けることで胃カメラでの精密検査を実施する必要があるかどうかを判断する、というのもひとつの方法です。
また、ABC検診でピロリ菌陽性がもし判明すれば、胃カメラを保険診療内で実施して除菌治療につなげることも可能です。
胃カメラとバリウム、どっちを選ぶ?

胃がん検診においては、胃や食道、あるいは十二指腸などを広くチェックして、胃がんを始めとして胃潰瘍、食道がん、逆流性食道炎、十二指腸潰瘍などに関する発症リスクを調べるために、胃カメラと胃バリウム検査が有用な検査として知られています。両検査には大きな違いがあります。
例えば、バリウム検査では検診前後に注意すべき制限がある、もしくは発泡剤やバリウム造影剤を服用するなどの身体的な負担もあることから苦手意識を持つ人も多いかも知れません。
また、バリウム検査には一定の安全基準が設けられており、検査機器の都合で体重120kgを超過している方やもともと便秘症の場合には検査対象外とされています。そうした場合は胃がん検診のために胃カメラを選択することもひとつの考え方であるといえます。
一方、胃カメラ検査では、検査前の前処置や検査中の嘔吐反射など懸念されることもありますが、主に消化管におけるさまざまな疾患の有無を評価し、異常病変がある際には迅速かつ的確に治療に結び付けることができます。
これまで見てきたように胃の検査にはいくつもの方法があります。検査リスクや不安の感じ方、体質などは個々人によって異なりますので、バリウムや内視鏡による胃がん検診の特徴を知り、自分自身の状況に合わせて最適な検査方法を選択するようにしましょう。今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。