足の甲が腫れる原因は?骨・筋肉の異常や他の病気の可能性も

足の甲の腫れはよく見られる症状です。足をひねったりぶつけたりした後に腫れることが多いのですが、原因がよくわからないままに気づいたら足が腫れていたということもあります。骨や筋肉の異常によって起こる腫れのほかにも、何らかの病気が原因で腫れてくることもあります。ここでは、そんな足の甲が腫れるさまざまな原因について解説します。
目次
足の甲の腫れの原因になる骨・筋肉の異常

足の甲が腫れている場合、まず考えられるのは骨や筋肉の異常です。それぞれどのようなメカニズムで腫れが起こってくるのか見てみましょう。
足関節捻挫
捻挫とは関節をひねって痛めてしまうことをいいます。関節包や腱、靱帯といった関節の周りの組織に損傷が起こる一方で、骨折や脱臼を伴わないため、骨や軟骨、その他の関節を構成する器官の位置関係は変わっていないことと定義されます。
捻挫を起こすと自発痛はもちろん、圧痛、腫脹、関節の運動制限が起こってきます。重度に関節周りの靱帯が損傷してしまうと、関節の固定が不十分となり関節不安定性をきたすことがあります。
レントゲンで確認せずに骨折を完全に否定することは難しいですが、一般的には受傷機転(外傷を負った際の原因や経緯)から骨折を否定します。骨折の場合は変形を伴わないような骨折であればほとんどの場合は受傷したときに何かに接していた場所に痛みを感じて腫れてきます。一方、捻挫の場合は実際に何かに接していた場所ではない別の場所に腫脹と痛みを感じます。
例えば、足関節の捻挫であれば普通は足先が地面に接しているだけで、足の甲や足首には何も接していないのに、足の甲や足首に腫れと痛みが出てきます。骨折の場合、地面に接していた場所以外に腫脹が起こるのであれば、大きな変形を伴うはずです。
受傷機転が捻挫らしく、明らかな変形がなければ安静、冷却、挙上などで保存的に治療を行います。
中足骨骨折・疲労骨折
足の真ん中から足趾の付け根までを構成する5本の骨を中足骨と言います。この中足骨の骨折でも足の甲が腫れてきます。
足の甲にものを落としたり何かを蹴飛ばしたりしたときに骨折を起こすことがあります。ひびが入る程度でも周囲への皮下出血のために比較的強く足の甲の腫れが見られます。骨の変形があれば、さらに強く腫れが見られるでしょう。
また、中足骨はハイヒールを履いたときやつま先立ちをしたときなどに全身の力がかかる骨になります。毎日ハイヒールを履いているなど、骨に力がかかり続けるような生活をしている場合はだんだんと骨に負担がかかっていずれ疲労骨折を起こしてしまいます。
中足骨の骨折は基本的には足に負担がかからないようにギプス固定や添え木固定のうえで松葉杖歩行などになりますが、骨のズレが強い場合には手術で骨を固定する場合もあります。
腱や靱帯の損傷
関節付近の腱や靱帯の損傷は捻挫となりますが、それ以外の腱や靱帯が損傷した場合、痛みに加えてそれらの組織が修復のために腫脹してきますから、足の甲の腫れをきたすことがあります。強い力がそれらの靱帯や腱にかかる事で起こります。こうした場合、安静にして治癒を待ちます。
リスフラン関節症
足の甲の腫れの中でも、特にリスフラン関節というところに起こる関節変形のことをいいます。
リスフラン関節というのは、足の甲のアーチの頂点辺りにある関節で、足の根元辺りを形作る小さい骨の集まりと、中足骨という、足の真ん中から足趾の根元まで伸びる骨の間にある関節です。
この関節部分に長年力がかかり続けることで骨や関節が変形し、痛みを来したり足の甲が腫れたりするのがリスフラン関節症です。リスフラン関節症は特に捻挫や骨折の経験のない中高年以降の女性に多く見られます。
リスフラン関節症は特に外傷によって起こるわけではなく、長年たまった関節への負担によって引き起こされますから、自然治癒することはなかなか難しく、また複雑に骨と骨が接している関節部分の変形なので手術によって治療することも難しい病気です。
一般的には痛み止めを飲みながら、リスフラン関節に負担がかかりにくい装具やサポーターを装用することで症状の軽快を待ちます。
足の甲が腫れるその他の病気

足が腫れるというと、骨や靱帯の損傷がまず頭に浮かぶと思いますが、それ以外にも血流の異常や代謝異常によっても足の腫れが出現します。代表的ないくつかの病気について見てみましょう。
浮腫
浮腫というのはむくみのことです。一日中立ち仕事をしたり、座りっぱなしで過ごしたりしたときに足の浮腫が見られます。
そもそも人の体は、皮膚の下に皮下組織という構造があり、その下に筋肉や骨があります。皮下組織には脂肪や線維組織があり、スポンジのようにスカスカな組織ですから、水分がよくたまるのです。
また、血管の構造も説明しますと、血管というのはゴムホースのようにまったく穴のないチューブ状の構造をしているのではなく、ちいさな穴がたくさん空いた構造をしています。この穴は、赤血球や大きなタンパク質などは通過できませんが、水やイオンなど小さなものは通過できるのです。
そのため、血管からは常に水が漏れ出しており、皮下組織に水がたまります。ただし血流がちゃんと保たれていると、静脈が血液を心臓に戻そうと流れていますから、皮下組織に漏れた水分も心臓へと戻っていき、水が皮下組織にたまってしまうことはありません。
立ったままだとか、座ったままだとかで心臓より低い位置に足があり続けると、重力に従って水が足の皮下組織にたまりやすく、むくみとなってきます。
また、心臓が悪くて血の巡りが悪い場合や、腎臓が悪くて水分が体にたまりやすくなっている場合には、血管から皮下組織に水分が漏れ出しやすくなるため、立ったままや座ったままでなくても皮下組織に水分がたまりやすくなり、むくみやすくなってしまいます。
そのため、心不全や腎不全を持っている人は浮腫の程度でそれらの病気の状態をうかがい知ることができるのです。
エコノミークラス症候群
エコノミークラス症候群とは、エコノミークラスに乗っているひとに多く起こる為つけられた病名ですが、エコノミークラスに関係なく、足をほとんど動かさない場合に起こる病気です。
血液は動脈で心臓から送られ、静脈で心臓へと帰って行きます。静脈によって心臓に帰るためには周囲の筋肉の収縮や、足を上げることによる重力の変化が必要です。足を動かさなければこの静脈を送る機構が上手く働かずに血液の流れが止まってしまいます。血液は流れが止まりうっ滞してしまうと固まってしまいますから、足を長時間動かさないと足に血の塊、血栓が形成されてしまうことがあります。
次に動いたときに血流が再開すると、血栓が血流に沿って心臓、そして肺に流れていき、肺の動脈に詰まってしまうことがあります。これが肺塞栓症で、エコノミークラス症候群による肺塞栓症はエコノミークラスに長時間乗った場合や車中泊をしたあと、術後安静から動き始めたあとなどに起こります。
エコノミークラス症候群が起こる背景には血流のよどみがありますから、血管から皮下組織への水分の漏れ出しもよく起こります。また皮下組織の水分が心臓に戻るための静脈の働きも阻害されていますから、よく浮腫が起こります。そのため、足をあまり動かさない場合の浮腫を見た場合には、エコノミークラス症候群を起こしていないかも注意して確認する必要があります。
甲状腺機能低下症

甲状腺というのは、首元にあるホルモンを作成する臓器で、この甲状腺からは甲状腺ホルモンというホルモンが分泌されます。甲状腺ホルモンは「体を元気にするホルモン」といえます。甲状腺ホルモンが低下すると元気がなくなったり、血圧が低下したり、脈が遅くなったり、汗が出にくくなったりといったような症状が見られます。
このとき、体内のさまざまな物質の代謝にも影響がでてきます。皮下組織にはムコ多糖類という物質が沈着します。特に下腿や足の甲に沈着しやすく、浮腫を呈します。治療法には甲状腺ホルモンの補充などがあります。
痛風
痛風は血液中の尿酸の値が高くなることで発症します。ある日突然足の親指をはじめとする関節が腫れて激痛が走る病気です。尿酸を下げる治療をしなければ定期的に痛みが来るため、痛風発作と呼ばれています。
発作を繰り返すと、そのたびに症状が悪化し、病状が進んでしまいます。腫れが続くことはあまりありませんが、稀ではあるものの病状が悪化すると関節の変形に至ることもあります。
足の甲が腫れたら何科を受診する?
足の甲が腫れた場合は、痛みがあれば骨や関節が損傷を受けて腫れている可能性が高いので整形外科を受診しましょう。痛みがなく、押すとぷにぷにしたような腫れの場合は浮腫の可能性が高いので、内科の受診をお勧めします。
迷った場合は先ずは整形外科を受診し、必要に応じて内科に紹介してもらうのがよいでしょう。
<執筆・監修>

徳島赤十字病院
麻酔科 郷正憲 医師
麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。
麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。
本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。
「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」