朝吐き気がするのはなぜ?考えられる原因と対処法

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朝になると吐き気がする……。そんな経験を持つ人は多いことでしょう。朝の吐き気にはさまざまな原因が考えられます。ここでは吐き気が起こる原因と対処法について解説します。

朝の吐き気の原因

朝の吐き気にはさまざまな原因があります。代表的なものを見てみましょう。

胃もたれ

胃もたれでは、ストレスやアルコール、鎮痛剤などの薬剤の影響によって慢性的に胃に取り込まれた食べ物が残っているように感じられます。

前日に摂取したアルコールやピロリ菌感染などによって胃の粘膜が通常よりも刺激されて、胃酸の分泌を増加させることにより、朝方に胃もたれ症状が起きて、胃部不快感や腹痛、吐き気などを自覚します。

アルコールの過剰摂取や生活習慣の乱れ、過度なストレスなどの原因をひとつずつ取り除くことによって、胃もたれによる吐き気症状の改善が期待できます。

自律神経失調症

自律神経失調症は、日々の過労やストレスによって自律神経の不調が生じて、嘔気のみならず不安感やイライラ感、不眠、耳鳴りなど多彩な症状が出現します。

自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが崩れることでさまざまな症状を引き起こします。

日常生活における仕事内容や人間関係などに関連するストレスを多く抱える事によって自律神経に不調が生じて、脳幹部に存在する嘔吐中枢が刺激され、吐き気症状が出現すると考えられます。

また、過労のために寝不足になる、あるいは慢性的に睡眠の質が低下すると、自律神経系統である交感神経と副交感神経の切り替えやバランス調整が難しくなります。

その結果、腸管の消化機能や蠕動運動を抑制する働きを有する交感神経が優位な状態になって夜に食べたものの消化不良が引き起こされ、翌朝に吐き気症状が生じます。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアには、嘔気やむかつき症状を生じる、ゲップが出やすい、横になるとお腹が苦しく右横を向いたり、起き上がったりすると症状が改善傾向を示す、といった特徴があります。

機能性ディスペプシアに随伴する吐き気症状は、胃や十二指腸にある食べ物を深部(肛門側)へと送り込む消化や蠕動に関連する腸管機能の不具合から引き起こされると考えられており、上部内視鏡検査で胃内部を観察しても、特に明らかな異常を指摘できません。

本疾患を引き起こす直接的な原因としては、ストレスや不眠傾向、過度のアルコール摂取や喫煙習慣、あるいはカフェインの過剰摂取などが挙げられます。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃から分泌される胃酸が食道側へ逆流することで、主に胸焼けや吐き気症状などが自覚される病気と捉えられています。

したがって、普段から胸焼け症状が頻繁に起こる、喉の奥の苦い症状に伴って嘔気を認める際には、逆流性食道炎の発症を疑います。

胸焼け症状が特徴的であり、吐き気など多彩な症状を認める逆流性食道炎に対しては、胃酸分泌が過多である際には胃酸を抑える薬剤を服用することで症状改善が期待できます。常日頃から胃酸を増加させる香辛料など刺激物や過度の飲酒を控えることも重要です。

また逆流性食道炎を放置すれば、食道粘膜が慢性的に胃酸に暴露されることによってバレット食道という状態に変化して、食道がんの発症リスクが上昇する懸念もあります。

低血圧

疲れやすい、朝起きると常に吐き気を催すなどの症状が長期的に継続している場合には、低血圧に陥っている可能性が考えられます。

低血圧は血圧が通常よりも低い状態を指しており、吐き気症状に伴って胃部違和感、肩こり、頭痛、耳鳴り、めまい、動悸など多種多様な症状が生じます。

高血圧は動脈硬化関連の疾患発症リスクを上昇させることが広く知られている一方で、低血圧は明確な判断基準がないうえに個々によって症状の違いがあるため、世間一般にあまり知られていないのが現状です。

心配な方は、一度朝起床時に自分が低血圧かどうかをチェックするために、家庭用の自動血圧計などを使用して血圧を測定してみることをおすすめします。

朝の吐き気の対処法

朝に自覚する吐き気症状がストレスによって引き起こされている場合には、まずは横になってできるだけ安静を保持する、深呼吸して気分をリフレッシュさせる、毎日ぬるま湯に10分間浸かる、水分をこまめに摂取するなどの対処法があります。

日々の生活において十分に睡眠時間を確保する、胃に負担がかかるニラやニンニクなどの香辛料・刺激物や過度のアルコールを控える、あるいはコーヒー、紅茶、エナジードリンクなどのカフェインを多く含む飲料を出来る限り摂取しない、なども有用です。

また、日々の食事方法を見直して、消化の良い食材をよく噛んでゆっくり食べることによって食べ物の消化吸収を促し、胃散の過剰分泌を防ぎ、吐き気症状を改善させることが期待できます。

漢方薬も選択肢に

朝に吐き気を強く自覚する際には、市販の吐き気止め薬を使用することによって、一時的に症状が緩和されて改善するケースもあります。

嘔気症状に対して、医薬品では根本的に症状が改善しない場合もあり、そのような際には漢方薬が選択肢となります。

嘔気症状の改善目的に広く普及して用いられている漢方薬としては、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)六君子湯(りっくんしとう)などが挙げられます。

半夏厚朴湯はのどのつまり感、腹部膨満感などにも効果的と考えられていますし、六君子湯

は食欲不振、強い胃もたれ症状などにも使われます。

これらの薬剤を服用しても吐き気が継続して認められる場合には、自己判断のみで薬の服用を続けるのではなく、医療機関を受診することをおすすめします。

まとめ

これまで朝吐き気がするのはなぜなのか、考えられる原因と対処法などを中心に解説してきました。

朝の吐き気は、前日の飲酒や食べ過ぎ、自律神経の不調など複雑な原因によって引き起こされます。嘔気症状が長期に渡って継続している際にはさらなる原因を追究して適切な対策を講じるために専門医療機関を受診することが重要です。

常日頃からストレスを抱えることが多く、自律神経失調症が疑われる際には心療内科、胃もたれが随伴して認められるケースでは消化器内科、それ以外の症状を呈する場合には総合内科や総合診療科の受診を検討するとよいでしょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。


<執筆・監修>

国家公務員共済組合連合会大手前病院
救急科医長 甲斐沼孟 医師

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院を経て、令和3年より現職。
消化器外科や心臓血管外科の経験を生かし、現在は救急医学診療を中心とする地域医療に携わり、学会発表や論文執筆などの学術活動にも積極的に取り組む。
日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。
「さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして微力ながら貢献できれば幸いです」

甲斐沼孟

TOTO関西支社健康管理室  室長(産業医) 甲斐沼孟 医師 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月より現職。 消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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