ウイルス性イボは自分で治せる?市販薬と病院で受けられる治療法

イボは多くの人に見られる症状です。イボの多くはウイルスによるイボで、体の一部分にまとまって複数個のイボが見られるのが特徴です。ここではウイルス性イボの治療方法について解説します。
目次
ウイルス性イボ(尋常性疣贅)とは?

ウイルスによるイボは、日本語の病名では尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)といいます。医学用語の「尋常性」とは、「よくある」という意味で、イボを意味する「疣贅」につながることでイボの中でもよく見られるものという意味で名付けられています。
尋常性疣贅の原因となるのは、ヒトパピローマウイルスの感染です。ヒトパピローマウイルスは皮膚と皮膚が接触することによって感染します。
この皮膚と皮膚の接触は他人との接触だけではなく、自分自身の皮膚から他の部分の皮膚への感染も意味しています。特に近くの皮膚へと広がることが多く、体の一部分にイボがいくつか固まってできる傾向があります。
イボと似たような病変に、タコ(医学用語で胼胝といいます)があります。タコは皮膚の表皮層が分厚くなったものです。表皮層には血管が通っていませんから、タコを切り取っても出血はありません。
しかし、イボは表皮の下の真皮層が表層へと広がっています。真皮層には毛細血管が通っていますから、イボを切り取ると点状に出血が見られます。
また、老人性のイボもあります。こちらは脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)といい、褐色から黒色のイボ状隆起をいいます。シミが膨らんでくる感じだとか、皮膚に粘土をつけたような感じと表現される病変を示します。
脂漏性角化症は皮脂分泌が多い部位にできやすいです。病気の原因としては、皮膚の表皮細胞が皮膚の中で増殖をすることによって起こります。こちらはウイルス感染とは関係なく、尋常性疣贅とは全く別の病気です。
市販薬でウイルス性イボを自分で治すには?

放っておくと広い範囲にどんどんと広がっていくこともあるやっかいなイボですが、イボを治療する市販薬があります。
ヨクイニン
ヨクイニンはハトムギの、皮を除いたタネのことです。古くからさまざまな薬効を期待され利用されてきた生薬で、炎症を抑える作用の他、体の水分バランスを整える作用があるといわれてきました。
ヨクイニンを内服すると、肌の代謝が正常化され、異常に増殖している皮膚の細胞を正常化させることでイボの改善を期待します。
効果が出るまでは個人差が大きく、早い人では1週間程度で効果を感じる人もいれば、数か月かかって改善を感じる人もいます。
サリチル酸
サリチル酸はβヒドロキシ酸に分類される植物由来のホルモンで、化学的に合成することも容易な物質です。
皮膚に塗ることで、炎症を抑えたり皮膚の角質を柔らかくする作用があります。イボに塗ることで固い表面を柔らかくし、浸透することで炎症を抑え、それ以上のイボの増殖、成長を抑えます。
イボに対して外用する市販の薬はほとんどがこのサリチル酸を含んでいます。
病院で受けられるウイルス性イボの治療法

ウイルス性イボに対しては、市販薬では十分に対応できないことも少なくありません。そのような場合や、早く治したい場合は病院を受診し、治療を受けるのが良いでしょう。病院での治療法を紹介します。
液体窒素
よく行われるのは液体窒素による凍結療法です。イボに対して最も一般的な治療法で、日本皮膚科学会でも推奨している方法になります。
方法としては、マイナス196度の液体窒素を綿棒に含ませて、イボに押し当てます。約5~30秒ほど当てることで、皮膚の表面が凍結され、変色します。出血を伴うことはほとんどありませんが、長めに治療を行うと深い層まで冷やされて、若干の痛みを感じる場合があります。
治療後は特に生活の注意点はなく、ガーゼや絆創膏による保護も必要はありませんし、入浴も可能です。しかし1回の治療では肌に住み着いたウイルスを完全に死滅させることはできないため、2~3週間に1回のペースで複数回治療を続けます。これにより、イボがだんだんと小さくなり、完治します。
イボが大きい場合や深い層まで感染が及んでいる場合などはなかなか完治まで行かないことも多いため、他の治療と併用します。
SADBE療法
SADBEとは、皮膚炎を起こす物質です。これを皮膚に塗ることで皮膚に炎症を起こし、免疫力を高めることでウイルスに対抗します。
この治療は皮膚に痛みを感じないのが特徴です。免疫力をじゅうぶんに高めた状態を維持するため、液体窒素療法より頻回な1~2週間に1回の通院が必要ですが、子どもにも可能で優しい治療と言えます。
その他の治療法
液体窒素やSADBE療法以外にもさまざまな治療法があります。
モノクロロ酢酸塗布療法は、強い酸であるモノクロロ酢酸を塗布することでウイルスに感染した細胞を直接的に破壊する治療です。2週間に1回程度行います。痛みも軽めですが、塗った後はしばらくそのままにしておく必要があります。
ブレオマイシン局所注射療法は、抗腫瘍効果のある抗生物質であるブレオマイシンをイボに直接注射することで効果を発揮します。こちらは月に1回程度行います。痛みが強いですが、効果が高いため、他の治療で効果が見られない場合に行われます。
ウイルス性イボのやってはいけないNG行動

イボには色々な民間療法があります。しかしその中にはやってはいけない治療法もあり、注意が必要です。
まず、よくいわれるのは「ピンセットでイボを取り去れば良い」というものです。昔からおばあちゃんが孫に行ったりしますが、深い層にあるウイルスに感染した細胞は取り去れないことが多く、また皮膚に跡が残ってしまう場合もあるため、やめた方が良いでしょう。
大人の場合は放置するのもよくありません。大人になってから感染するということは何らかの感染が広がりやすい要因がある可能性がありますから、放置しても良くなることは少なく、逆にどんどんとイボが広がって対処が難しくなる場合があるのです。
一方で子どもの場合は、周りに感染している子がいるときにうつってしまうことが多いです。この場合、一時的にイボが広がることはありますが、子どもの皮膚は代謝が早く、また免疫力もあるためしばらく様子を見て自然に回復するのを待っても良いとされています。近年までは子どもでも早めに治療をするべきといわれていましたが、最近はしばらく様子を見るのが主流になっています。
様子を見る場合はイボにあまり触らないようにすることが大切です。先に述べたとおり、ウイルスは接触感染で広がります。ウイルスが表面に付着していることもありますから、イボを触った手に感染したり、もしくはイボに触った手で他の場所に触ることでその場所に感染したりすることで、体の色々な場所に広がる可能性があります。ですので、イボはなるべく触らないようにして、入浴の際にきれいに洗うことが重要になります。
<執筆・監修>

徳島赤十字病院
麻酔科 郷正憲 医師
麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。
麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。
本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。
「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」