胃が痛いときの寝方は?痛みが生じるメカニズムと緩和方法

お悩み

胃が痛くなって辛いときに、どうすれば症状を和らげることができるのでしょうか?

胃痛は姿勢や寝方を工夫することで改善する場合があります。ここでは胃痛のメカニズムや症状を和らげる方法について見ていきましょう。

食べ過ぎや消化不良の場合

食べ過ぎた次の日などに胃痛が生じる、あるいは胃がもたれて苦しくなるなど、日常的な生活における負担によって消化不良を含めた胃の不調が出現することがあります。

胃もたれは、摂取した食べ物の消化や吸収がうまく進まずに、胃に内容物が滞っている状態であり、胃が重い、ムカムカする、嘔気がする、などの症状が現れます。

一度に多くの量を食べ過ぎて、胃が苦しくなって胃もたれする原因は、食べ物が胃に滞留する時間が長くなるために引き起こされます。

食べ物の消化が不十分な状態で腸管に送り出され、上手く処理できずに消化不良を起こして、食べ物が胃に送り返されることで胃に大きな負担がかかり、胃痛や胃もたれの症状につながります。

また、普段から香辛料や冷たい物、塩気の強い食べ物や脂肪を多く含む食べ物、アルコール、カフェインなどを多く摂取すると、胃粘膜が刺激されて胃の痛みを引き起こすことが知られています。

おすすめの姿勢と寝方

食べ物をたくさん食べてお腹がいっぱいになって苦しいときは、横になって休みたいと思いますが、できれば立位のままで体を垂直に保っておくことが胃もたれ症状を緩和させるためにはおすすめです。

なぜなら、食後直ぐに横になってしまうと、胃に物理的な圧力が余計に掛かって、胃酸が食道に逆流し、胃部の不快感などの症状が悪化する可能性が高いからです。

食後1~2時間経過した後でも、できる限り消化している最中の食べ物や胃酸が逆流しないように胃を圧迫するような寝方を避けて、頭部分が胃より下になるような姿勢は回避することを心がけましょう。

逆流性食道炎の場合

胃で消化できる一定量を超過して食べ過ぎてしまうと、胃は一挙に食べ物を消化しようと無理をする結果、胃の痛みや胸やけ症状などが出現するといわれています。

たくさんの食べ物を一度に大量に摂取して食べ過ぎた状態は、食べ物の消化が間に合わず、長い時間かけて胃に内容物が滞留するために胃に大きな負担がかかりやすいと考えられます。

食べ物を消化するうえで過剰に分泌される胃酸が、胃粘膜を直接的に刺激して胃痛や胃もたれが引き起こされる以外にも、食道領域まで逆流してくる胃酸が過多になることによって胸やけ症状を感じる場合があります。

おすすめの姿勢と寝方

食後すぐに横になって胸焼けなど逆流性食道炎の症状を自覚する場合には、左側を下にして寝るのがおすすめです。

胃の約4分の3を占める部分は中心線より左側に寄っており、胃の左側のスペースに内容物が貯留する傾向がありますので、右を下にして寝ると胃酸が逆流しやすく、その反対に左側を下にして寝ると物理的に胃酸が逆流しにくいと考えられます。

胃痛を和らげる方法

姿勢や寝方の工夫以外にも胃痛を和らげるポイントはいくつもあります。次に紹介する方法によって胃痛が改善する可能性があります。

胃を温める

胃痛を緩和する方法の一つとして、雑炊などの温かくて消化に優しい食べ物を摂取して胃を温めることが有効です。

ショウガやかぼちゃなど、胃を温めて水分を排出してくれる食べ物を中心に、温かくて消化にいい食事を取り入れるようにしましょう。

また温熱シートや湯たんぽなどを活用して胃を温めることで胃周辺の血行が良好となって、消化する働きを補助する効果が期待できます。

ぬるめの白湯を飲む

ぬるめの白湯を飲むことで、胃を含む内臓の消化力が全体的に上昇すると考えられています。

胃は食べ物を消化してその栄養成分を吸収する重要な身体の器官であり、白湯を飲むことで胃を深部から温めることによって、胃腸の働きを高めて、消化力が高まり、毒素がたまりにくくなる効果を期待できます。

新陳代謝が活性化して体温が向上し、冷え性が改善されることによって胃痛の緩和につながることもあります。

胃痛に効くツボを押す

胃痛を感じた際に、日常生活で簡便に実践できるツボがいくつか存在します。

ツボを実際に圧す際には、無理やり強く長時間押すのではなく、指の腹部分で、5秒から10秒程度を目安にしてゆっくりと気持ちいいと感じるくらいの強さのレベルで押すことをおすすめします。

手関節部から指3本分程度間隔をあけた肘側にある内関(ないかん)は、飲み過ぎやストレスに伴う嘔気、胃痛症状などに効果的とされているツボです。

親指と人差し指の付け根が交わった場所にある合谷(ごうこく)は、過労に伴って胃痛や頭痛などの症状を緩和させたいときに効果的とされているツボです。

食事の仕方を見直す

日常の食生活でよく食べ物を咀嚼すると、食べ物はより細かくなって唾液の分泌が促進されて胃腸の消化能力を補助できますし、ゆっくりよく噛むことで満腹中枢が刺激されやすくなって過剰な食べ過ぎを予防することが期待できます。

胃に負担が大きくかかる早食いや大食いは避けて、常日頃から腹八分目でなるべく抑えるように心がけるとよいでしょう。

漢方薬を活用する

胃痛を和らげる市販薬として、生薬や漢方成分を配合している胃腸薬が店頭などで多く見受けられます。

胃が痛く、もたれてしんどいときには、自分の体調や状態に応じて適切な漢方薬を選択しましょう。

例えば半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)はストレスで胃が痛くなった場合によく用いられる漢方薬であり、神経症や胃弱などを始めとして体力が中程度、食欲があまりなく、嘔気や下痢などの症状を呈している人に適しています。

また、安中散(あんちゅうさん)は多くのストレスがかかっており、身体全体が冷えて胃痛が引き起こされている場合に用いられる漢方薬であり、体力は中程度以下、胸焼けや食欲不振などの症状を呈する人に適しています。

まとめ

胃が痛いときの寝方、痛みが生じるメカニズムと緩和方法などを中心に解説してきました。

普段の生活で食べすぎたり飲みすぎたりすると、食べたものが十分に消化されずに、胃の働きが悪くなりますし、日々のストレスや食生活の不規則な乱れから胃の不調を抱える場合も少なくありません。

辛い胃痛には市販の漢方薬などを利用して症状緩和に努めることができます。病気のサインとして胃の不調症状を認めている可能性も否定できませんので、胃薬や漢方薬を服用しても症状が改善しない際には消化器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。


<執筆・監修>

国家公務員共済組合連合会大手前病院
救急科医長 甲斐沼孟 医師

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院を経て、令和3年より現職。
消化器外科や心臓血管外科の経験を生かし、現在は救急医学診療を中心とする地域医療に携わり、学会発表や論文執筆などの学術活動にも積極的に取り組む。
日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。
「さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして微力ながら貢献できれば幸いです」

甲斐沼孟

TOTO関西支社健康管理室  室長(産業医) 甲斐沼孟 医師 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月より現職。 消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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