うつ病の発症と遺伝の関係…発症を予防するには?

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親や家族がうつ病になると、本人に寄り添いたいという気持ちとともに、自分自身も発症するのではないかと不安に感じることもあるでしょう。うつ病は遺伝するのでしょうか?

ここではうつ病の発症と遺伝の関係について詳しく見ていきましょう。

うつ病の発症と遺伝の関係

うつ病は、さまざまな要因が合わさって発症すると考えられています。その明確な原因はいまだに完全には解明されていません。その原因の一つに遺伝があります。

健常人が一生のうちにうつ病を発症する確率は6.5〜7.5%程度といわれています。それに対して片方の親がうつ病の場合に子供にうつ病が発症する確率は10〜15%程度といわれており、一般の発症率よりも2〜3倍ほど多くなります。

また、双子の1人が気分障害であったとき、双子のもう1人も気分障害である一致率は、一卵性双生児(完全に同じ遺伝子をもつ)の場合で70〜90%、二卵性双生児(遺伝子は異なる)の場合で16〜35%となっています。

遺伝子が全く同じである一卵性双生児の方が圧倒的に一致率が高いことは、気分障害に遺伝要因があることを示しています。ただし、双生児でさえも気分障害の遺伝性の原因は50〜70%であり、残りの30〜50%は遺伝以外の要因であると考えられています。

このようにうつ病を発症した人の子供は必ずうつ病になる、ということはありませんが、うつ病になりやすい傾向があることは指摘されています。

遺伝の他にもあるうつ病の発症要因

親がうつ病であれば自分も必ずうつ病になるというわけではありません。遺伝の他にも、環境要因や身体的要因が加わってうつ病が発症します。

環境要因には、幼児期の厳しい体験、家族の死、仕事や財産の喪失、人間関係のトラブル、家庭内の不和、就職や退職、結婚や離婚、妊娠や育児、引っ越しなどの環境の変化があります。

身体的要因には、慢性的な疲労、ストレス、睡眠不足、脳血管障害、感染症や甲状腺機能障害、月経や出産、更年期などのホルモンの変化、降圧薬や経口避妊薬などの影響があります。

うつ病の発症を予防するには?

うつ病の発症を予防するポイントをいくつか見ておきましょう。

自分を責める考えや性格を改める

うつ病は責任感が強い人や完璧主義の人に多いとよくいわれています。ささいなことでも積み重なることで発症してしまうこともあります。仕事や家事、学業等で求められた期待にうまく答えられてなくて引け目を感じることや、思い描いた結果に届かずに屈辱を味わうこと、そうしたことが続くだけでもうつ病になりやすくなります。

精神的な負担が大きいと、体力も落ちて過労や睡眠不足にも耐えられなくなるため、責任感の強い人ほどうつ病にかかりやすくなります。普段から自分の考え方を客観的に分析して、完璧主義に陥っていないかを見直すことが大切になります。

しかし、自分で自分の性格や考え方を振り返ることはなかなか難しいものです。やり方がわからないときは、初期段階で周囲に相談してみるのもよいでしょう。

日光を浴びてセロトニンを生成する

うつ病の原因となるものにセロトニンの欠乏があります。このセロトニンの欠乏を予防することも大事なことです。

人は日光を浴びることで脳内のセロトニンが大量に放出されます。日光をあびることでセロトニンをたくさん得ることができるのです。

さらに太陽光を浴びることで睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が停止し、体内時計がリセットされます。そのため、朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びましょう。そうすることで正しい睡眠のサイクルも作ることができます。

セロトニン生成に関わるトリプトファンを積極的に摂る

セロトニンはトリプトファンから生成されます。トリプトファンが多い食品としては、肉類、納豆、たらこ、牛乳やチーズのような乳製品があります。

これらの食材を極端に多くとればいいというわけではなく、多様な食品を取り入れてバランスのよい食生活を心がけましょう。

仕事と休憩のメリハリをつける

仕事をひとりで抱え込んでしまい、オーバーワークになる傾向のある人は、目の前の仕事を上手に周囲の人に頼む、あるいは依頼された仕事をうまく断る術を身につけることで、仕事と休憩のメリハリがつけられるようになります。

仕事のストレスは逃れようがなく、如何ともしがたいものがあるため、仕事の仕方や進め方を見直すことでストレスが軽減できることがあります。

適度な運動や外出で気分をリフレッシュさせる

運動すると自律神経の交感神経が活性化されて優位になり、意欲的でポジティブな思考になるといわれています。さらに脳内で分泌されるエンドルフィンが、気分の高揚・幸福感を促進させ、セロトニンが増えることで心が落ち着き、集中力が高まります。

コロナ禍となり、うつ病になる人が増えた原因として、運動ができなくなったことも一因であると考えられています。うつ病の予防にはリズミカルな運動がよく、ウォーキングやランニング、サイクリング、水泳などがあります。短時間でもいいので頻繁に行い習慣化することでうつ病の予防効果も高まります。

ストレスをためない

ストレスが高まってきたり、蓄積したりすると、身体面、心理・感情面あるいは行動面にさまざまな変化が現れます。

仕事や学校などでストレスを抱えている人は、仕事や生活の仕方を見直すことが重要になってきます。悩みを自分一人で抱え込むことは避けましょう。誰かに相談することで心が軽くなるものです。人に伝えるという行為そのものが、自身の頭の整理につながることもあります。身近にそのように相談できる方がいない場合は、相談窓口なども積極的に利用しましょう。

いかがでしたでしょうか。遺伝的な要因を自分の努力で変えることはできませんが、ストレスを減らして環境を変えたり、睡眠不足を解消したりなど環境要因や身体的要因を減らすことは可能です。思い詰めず、ストレスを溜め込まないような生活を心がけていきましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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