骨軟部腫瘍?ガングリオン?足首の「しこり」の原因

足首になにかしこりができて不安に思われている方はいらっしゃいませんか?
腫瘍でもできているのではないか、悪性じゃないのかと不安がどんどん強くなってしまうこともあるでしょう。ここではそんな足首のしこりの原因について解説します。
腫瘍性疾患と非腫瘍性疾患の違い

そもそも「しこり」の正体は何なのでしょうか。「しこり」の正体は、まず分類されるのが腫瘍性疾患か、非腫瘍性疾患かという分類です。
細胞は新陳代謝を繰り返しています。古くなった細胞は壊死してなくなっていき、そのなくなった分を補充するように周りの細胞が細胞分裂を繰り返すことでさまざまな器官の形や機能を維持しています。
しかし、その新陳代謝からはずれて、ある細胞が無秩序に細胞分裂を繰り返し、増殖していく疾患を腫瘍性疾患と言います。
腫瘍性疾患にも良性腫瘍、悪性腫瘍があります。この分類は非常に難しいのですが、簡単に言うと周りの細胞を巻き込んでどんどんと大きくなって言ってしまうのが悪性腫瘍、細胞が増殖するだけで周りの細胞を巻き込んだりせず、その場所で大きくなっていくだけなのが良性腫瘍です。
悪性腫瘍は血管を巻き込んだり、他の臓器を巻き込んだりすることで転移や浸潤といった無秩序な増殖を続けるため、命に関わることが多くなります。一方で、良性腫瘍はその場で大きくなるだけですから、命に関わることは少ないです。
このように、細胞が増殖することで何かしらのできものができるのが腫瘍性疾患です。一方で、もともとある細胞や器官が異常を起こすのが非腫瘍性疾患です。
ここでのテーマである足の「しこり」に関して言うと、何かしらの異物ができるのが腫瘍性疾患になります。非腫瘍性疾患による「しこり」として考えられるのは、元から骨の形が異常になっている場合や、肉離れなどによって筋肉の形が変形している場合などが考えられます。
これらの非腫瘍性疾患は経過観察をしたり、軽快するのを待ったりするぐらいしか治療がないので、ここからは腫瘍性疾患を取り上げるようにしましょう。
骨軟部腫瘍とは

骨軟部腫瘍というのは、骨や筋肉、脂肪などの細胞が腫瘍性に増殖する疾患です。多くの場合は良性ですが、ごく稀に悪性腫瘍が発症し、肉腫と呼ばれます。
肉腫の診断や治療は非常に専門的ですので、ここでは触れません。それ以外の骨軟部腫瘍について解説していきましょう。
骨軟部腫瘍の特徴
骨軟部腫瘍とひと言にまとめられていますが、その種類はさまざまです。例えば骨や軟骨の細胞から発生する腫瘍としては骨軟骨腫や内軟骨腫があります。
一方で、骨以外の軟部組織から発生する腫瘍としては、脂肪腫や平滑筋腫、神経鞘腫などが挙げられます。その名の通り、脂肪腫は脂肪から、平滑筋腫は平滑筋から、神経鞘腫は神経から発生します。
それらの腫瘍の特徴は、元々どの組織から発生したかによって決まってきます。つまり、骨や軟骨から発生してきた骨軟骨腫や内軟骨腫は骨と同じように固いです。一方で、軟部腫瘍は脂肪、平滑筋、神経など、柔らかいものからできていますから、柔らかいのが普通です。
また、これらの腫瘍は良性腫瘍ですから、周囲の組織に浸潤する事なく、塊を形成して大きくなっていきます。そのため、皮膚の表面から触れてみると、皮下に腫瘍が塊として触れ、どこまでが腫瘍なのか分かる事が多いです。また、周囲の組織に浸潤していないで固定されていませんから、皮膚表面から動かしてみると少し動くのを確認できることが多いのです。
骨軟部腫瘍の治療
骨軟部腫瘍は良性腫瘍で、全身に転移したり周りに浸潤したりすることはありません。そのため、小さい場合は様子見をするというのも選択肢になります。とくに骨軟骨腫や内軟骨腫は切除しようとすると骨を削らなくてはならないことも多く、比較的体への負担が大きくなりますから、様子見となる事もあります。
しかしだんだんと大きくなってくると、美容的にも気になるほどの大きさになったり、周囲の圧迫症状が出たり、といった症状が出現することがあります。とくに骨軟骨腫や内軟骨腫は固いですから、周囲の組織の圧迫により痛みが起こったり、神経の圧迫によって痺れの症状が出たりします。
ですので、多くの場合は骨軟骨腫や内軟骨腫であっても、症状が出た場合は切除が行われます。それ以外の軟部腫瘍の切除に関しては患者さん自身の希望に添うことが多くなりますが、あまり大きくなり過ぎると手術の際の傷が大きくなってしまいますから、ある程度大きくなったら手術をする場合がほとんどです。
ガングリオンとは

足首にしこりができた場合に、よく原因として考えられるのはガングリオンです。ガングリオンも、良性腫瘍の一種ではあります。
しかし、骨軟部腫瘍と異なるのは、しこりとして触れるのは腫瘍が大きくなっているからではなく、腫瘍の中にたまっている滑液と言われる液が増えているからであるため、骨軟部腫瘍とは別物として扱われています。
ガングリオンの正体は、関節を包む膜である関節包を構成する細胞、あるいは腱鞘という器官の細胞が良性腫瘍として増殖したものです。
このガングリオンは、腫瘍性に増殖するスピードは早くありません。しかし、これらの腫瘍細胞は袋状の構造をしています。そして、関節や腱をなめらかに動かすために存在している滑液という液が、どんどんとこの袋の中にたまっていきます。
袋に液体がたまりますから、だんだんと大きくなってきます。また、形も特徴的で、ボコッと球体が皮膚の下に存在するように見える事がほとんどです。浸潤などをするわけではありませんから、可動性は良好ですし、辺縁もはっきりしています。
ガングリオンは全身あらゆる場所にできえますが、全体の約7割が手首、約1割が足や足首と言われています。やはり手首や足首は関節が多く、発生しやすいと言えるのです。
年齢も幅広い年代で見られますが、好発年齢としては20~50歳頃の女性に多いです。
ガングリオンの治療
ガングリオンは、比較的簡単に診断されます。触診だけで大体分かります。エコーで見ることで、より確実な診断が可能です。
小さい初発のガングリオンであれば、治療は針を刺して内容液を吸引するだけになります。これだけでも自然に軽快する例も多いためです。数回繰り返すこともありますが、多くの場合はだんだんと小さくなり、再発しなくなります。
繰り返し内容物がたまる場合や、大きいものの場合は、手術が選択されます。しかし、関節包や腱鞘からつながっている事が多いため、どこまでが正常な構造なのかわかりにくい事、また手術をして切除した場所は構造的に弱く、再度力がかかりやすくなる事などから、手術後に再発する例も少なくありません。
また、手首や足首などよく動く場所の手術になりますから、術後に皮膚が瘢痕化(はんこんか)しやすく、なるべく手術を行わない方針の整形外科医が多い様です。
これまで見てきたように、足首の「しこり」の多くは骨軟部腫瘍またはガングリオンです。いずれも整形外科の領域ですから、気になる症状のある方は整形外科の受診をおすすめします。