芍薬ってどんな生薬?芍薬を含む漢方薬の効果と使い方を解説

芍薬(シャクヤク)はきれいな花を咲かせることでも知られていますが、生薬として用いられている植物でもあります。芍薬を配合した漢方薬には、「当帰芍薬散」や「芍薬甘草湯」など有名な処方が多いので聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?その効果は血を補う補血作用から鎮痛作用まで幅広く、婦人科系のトラブルに良く使われています。

今回は芍薬という生薬の働きに注目し、配合した漢方薬の使い方についても紹介していきます。

1.芍薬とは

芍薬はボタン科の植物であり、根を乾燥したものが生薬として用いられています。芍薬は観賞用としても知られ、美しい花を咲かせる植物です。「立てば芍薬、座れば牡丹」といわれるように、牡丹と非常に良く似ていますが、芍薬はすらりと伸びた茎の上に大きな花を咲かせることが特徴です。

芍薬は血液の循環を促したり、痛みを取る効果に優れていることから、昔から婦人科系や痛み止めとして用いられてきました。現代でも様々な漢方薬の中に含まれており、主に婦人科系のトラブル、鎮痛鎮痙の目的で使用されることが多い生薬です。

2.芍薬の効果

芍薬にはペオニフロリンという有効成分が含まれていて、鎮痛、鎮痙、抗炎症、抗けいれんなど、様々な効果があることが分かっています。

漢方的な考え方によれば、血を補う役割のある「補血薬」として用いられ、痛みを緩和したり、血のめぐりのトラブルによる婦人科系疾患の改善に効果があるとされています。

他にも、筋肉のこり、こむらがえり、胃痙攣、手足のひきつり、全身の痛みなど様々な臨床的な効果がある生薬です。婦人科系においても幅広く対応し、様々な漢方薬に処方されています。緊張を緩めて血の巡りを良くする効果にも優れているので冷えのある方に用いられる生薬でもあります。

  • 月経不順、生理痛
  • 冷え症
  • 不妊症
  • 産前産後
  • 足のつり
  • 全身の痛み
  • 貧血

3.芍薬の副作用と注意点

芍薬について特別に多く報告されている副作用はありませんが、血流が促されることによる副作用や、体質に合わないことによる副作用が起きる可能性はあります。

また、芍薬を含む代表的な漢方薬である「芍薬甘草湯」に含まれる「甘草」は、むくみや体重増加などを特徴とする「偽アルドステロン症」に加え、血液中のカリウムが少なくなる「低カリウム血症」などを起こすことが報告されています。芍薬甘草湯を飲んでいるときに、他の漢方薬を併用する場合には注意が必要です。

4. 芍薬を使った漢方薬の使い方

芍薬を使った漢方薬は実に多くの種類があります。主に婦人科系のトラブルに対応する処方に使われることが多いですが、他にも高齢者に多い足のつりや痛みに対して用いられる漢方薬にも配合されるなど用途は多岐にわたります。

全てを紹介することは難しいので、良く用いられる体表的な漢方薬をご紹介します。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

痛みや冷え、月経不順などの婦人科系のトラブルを抱える女性に主に用いられます。疲れやすく体力の少ないタイプで、血が不足して貧血気味、顔の青白い方に適しています。めまいや下腹部痛、足腰の冷え、むくみなどにも対応する漢方薬です。血を補い、温める作用が高く肝気の流れを改善して血の流れを改善します。栄養吸収を担う「脾」に溜まった水を取り除く作用もあるので、胃腸の冷えによる不調を改善する効果もあります。

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

芍薬と甘草だけを配合した非常にシンプルな処方であり、痛みを取り、血行を促す効果に優れた漢方薬です。臨床的には足がつる症状に対して処方されることが多く、こむらがえりに用いる漢方薬として有名です。不足している「気」と「血」を補うことで、急なけいれんを落ち着かせる作用があります。就寝時やスポーツの時に足がつる場合に、頓服的に用いても速やかな効果が得られる即効性も特徴です。

また、婦人科系においては生理痛や月経困難症にも効果があります。痙攣のような痛みや冷えによる腰の痛みにも対応するので、西洋薬の痛み止めや他の漢方処方で効かなかった場合にも効果が期待できます。

虚証や実証などの体力に関わらずに使用できるため非常に用いやすい漢方薬ですが、甘草による偽アルドステロン症などの副作用には注意が必要です。

桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

この処方は風邪薬として用いられる「桂枝湯」に含まれる芍薬を倍に配合した処方です。主に、便秘と下痢を繰り返す人に用いて、便通を整えるために使います。便秘と下痢を繰り返すというのは、漢方的に考えると「気」と「血」のバランスが乱れた状態です。桂枝加芍薬湯では血を補い、気の巡りを促すことで便通を正常に近づけていく効果があります。

芍薬を配合した漢方薬で快適な毎日を

芍薬は血を補って血流を促し、痛みやけいれんを抑える効果にも優れた生薬です。芍薬を配合した漢方薬は多種多様であり、今回紹介した処方以外にも非常に多くの種類があります。痛みや血の巡りによる不調を改善したい場合には芍薬が入っているかどうかも選ぶ上での一つの基準となるでしょう。

ただし、漢方薬は生薬同士の組み合わせで働くものであり、処方によって適応する体質も異なります。自分にあっている漢方薬が見つからない場合には、漢方の専門家に相談してみると良いでしょう。ぜひ、快適な毎日を過ごすため、漢方薬を上手に取り入れてください。

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